生か加熱か?
以前、キッチンドッグで主催していたお料理教室で、ローフードをテーマにしたクラスを行ったら、とても人気がありました。
犬種にもよりますが、犬には生肉を食べさせたい、という犬の飼い主さんは結構いらっしゃいます。
生食か加熱食か? という談義もよく聞きますが、実は私はそんなことを決める必要は全くないと思っています。
生であげる日もあれば、加熱する日もある、それはお肉を見て決めて欲しいと思うのです。
頭の中の観念や理論で決めるのではなくて、目の前のまな板の上のお肉を見て、決めて欲しい! 私はいつも、お料理教室では、そのセンスを身につけてもらいたいと、思っています。
生か加熱か?
生の肉には酵素が活性化したまま残っており、その酵素を取り入れることで、捕食者は消化の際に自分の潜在酵素を節約できる。そして、ビタミン類がフルに摂れる、というのが生食派の意見。
しかしながら、生食にはリスクも伴います。
実は、肉はある程度加熱した方が、タンパク質が変性して消化が良くなります。
そして、寄生虫や雑菌のリスクも激減します。
いくら身体が温まるという熱性の肉類を選んでも、冷たい肉の塊を一気に胃に入れて物理的に胃が冷える、ということもありますね。
そう考えると、せめて表面だけは焼いたり、茹でたりして雑菌をなくすというのはどうでしょう?
中まで火が入っていなくても、中途半端な(良く言えばミディアムレア!)火入れでいいのでは?
寄生虫の問題は、−35℃くらいで2〜3週間冷凍すれば、ほとんど死滅すると言われています。
脂身は、加熱すると酸化するわけですから生で食べたほうが良さそう!
そして、何と言っても目の前の肉が、フレッシュなのかそうでもないのか?
生で食べて美味しいのか加熱した方がいい感じなのか?
まさにその肉の状態によりますよね。

レバーはしっかり火を通していますが、牛挽肉は生のまま。
色や匂いをしっかりチェックして、安心できるものを生で食べさせましょう。

鶏胸肉は硬くならない程度に火を入れています。
牛テールは骨ごと生で。

買ってきた日の牛挽肉、何も加えず、練りもしないで、そのまま空気に触れていた部分が表面になるようにハンバーグ型に丸め、表面だけを焼いてまたほぐしたという調理。
人間のローフードの考え方とはちょっと違うよ!
野菜はどうでしょう?
生食といっても、犬のご飯の場合は、人間で流行りのローフードと一緒にはできません。
何と言っても、犬にはよく噛んで食べる、という習性がありませんから、植物の細胞壁を破壊して細胞内の栄養を摂取するにはそれなりのプロセスが必要です。
発酵するとか、潰すとか、加熱調理するとか。
生の野菜サラダなどを食べさせていれば、消化も悪く、栄養も摂取できず、体も冷え、あまり良いことはありませんね、実は人間だってそうなんですけどね!
そこで、犬にも、人間にも、その身体特性に合った調理方法というものが必要になってきます。
以前書いたように、植物は、薬にも、毒にもなりますからね。
生活力センスを磨こう!
それにしても、スーパーで買ってきた生肉は、野生の肉食動物が捕食する今まで生きていた野生の草食動物の肉とは違います。
野菜だって、栽培されたものと野生の動物が食べているものは違いますよね。どっちがいいのか悪いのか、そんなことは白黒はっきり決められるものでもないんですよね。
結局、飼い主さんの、生きていく上での『生活力センス』が問われ、飼い主さんが与えてくれるものしか食べることができない犬たちは、飼い主さんの『生活力センス』に人生(犬生?)を左右されることになりますね!
守破離(しゅはり)
何かを学びたいと思う時、その教室で講師が『本当は何を身につけて欲しいと思っているか?』ということをチェックするのとしないのとでは、受講して得るものが全然違うと思うのです。
例えばどんなお料理教室でも、レシピや方法だけを知りたいのなら、インターネットで検索すればわかるかもしれないことがいっぱい。
でも、そのレシピを教えたいと思っている人が、なぜそれを伝えたいのか、何を持ち帰ってもらいたいと思っているのか、を理解できたら、その人にはもはや一つ一つの材料のレシピなどは不要となります。
師匠から最初に教えられるのは、一通りの型。その型を忠実に守り、繰り返し身につけることで得られる基本。
そのうち、その基本をブレイクして、自分なりにこうやったらよりよくなるのでは?と思うところに到達するのだとか。
そして、自分のスタイルや哲学を身につけたら、師匠から離れて独立していく。
そのうち、やはり基本が大切だということに本当の意味で気がつき、再度『守』に戻って・・・・・という繰り返しにより、道を極めていくのだそうです。
お料理も、トレーニングも、犬のことに限らず全ての道は同じですね!