私の親が最後に一緒に暮らしていたのはモンタ君という雑種犬でした。ある冬の寒い朝、近所のおうちの庭先に捨てられていた子です。その家には動物が数頭いたので、ここなら飼ってくれると思ったのでしょうか。

でも、もうこれ以上は飼えないからと、我が家に連れてこられたのが始まりです。中学生だった私は、クラブ活動からお腹をすかせて帰ってくるのが18時過ぎ。ちょうど、母がモンタ君の夕食を作り終える頃です。

鶏もも肉の皮の脂を落とすようにジュージュー焼いたものを細かく切り、ものすごく細かくみじん切りにした水菜と白いご飯を混ぜ、最後にお醤油をひと雫、垂らします。

「このお醤油のひと雫が美味しいのよ!」と、母は真剣な目で入れすぎないように注意しながら垂らしていましたよ!笑

「さあ、モンタ君に食べさせて!」

と、母は私にそのお皿を渡すのですが、お腹が空いている私はモンタ君にお願いして必ず一口?いや、3分の1くらいはもらったものです。
その代わりに、私の食事の中からお刺身や焼いたお肉などを分けてあげていました。
こんなゴハンで、17歳半、立派に生きていました。

最後の瞬間は、しゃぶしゃぶ用の牛肉を生でお腹いっぱい頬張り、お水をガブガブと飲んで、母の膝で静かに亡くなったモンタくん——。

「人間の食べるものを犬にあげてはいけない」
と、あまりにも誤解を招くような極端なことを、一体誰がどのような経緯で言ったのでしょうか?

お料理教室の生徒さんや、講演会などでお話をさせていただく機会があるたびに、私はいつも皆さんに言います。
「自分で考えよう!」と。
獣医さんに言われたから、犬友達に言われたから、というだけで、理由もわからずに信じていることがありませんか?

犬に食べさせて良いものと悪いもの、その理由は?

例えば、犬に食べさせても良いもの、悪いものを語るときに、その理由を理解していますか?
生姜、ニンニク、いちご、ぶどう、鶏の骨、チョコレート…

成分が犬の代謝に合わなくてダメなもの、物理的にダメなもの、量の問題、消化の問題など、その理由は様々です。

犬の代謝に合わない成分を含んでいるものを、許容量以上に食べさせてはもちろんNGですし、消化できないものや物理的に内臓を傷つけるようなものも当然食べさせてはいけないのですが、だからと言って

「人間の食べ物を犬に食べさせてはいけない」

というところまで飛躍するのは、なんだかスゴイですね!
ここで、ものすごい誤解を生んだと私は思っています。
ドッグフードを売るための洗脳作戦みたいですね!
ドライフードや缶詰フードは便利ですが、あくまでも加工食品です。
毎日、一生食べ続けるものではありません。


生命力に溢れた食材とは?


それよりも、新鮮な食材を使って毎日作りたての食事をとるということは、加工食品では到底提供することのできない素晴らしい健康へのメリットがたくさん詰まっています。

ぜひ、道の駅などを訪問してみてください。生命力に溢れた食材が並んでいるはず。

この、『生命力に溢れた食材』がどんなものなのかを選べる選択眼も必要で、それも『自分で考える』こと、または『自分で感じる』ことです。

作ろうと思っていたレシピにキャベツと書いてあっても、買いに行ったお店のキャベツが生き生きとしていなかったなら、他の素材に変更するくらいでなくてはね!
私は、ココロにも栄養を与えてくれる、こんな野菜たちを見てしまったら買わずにいられない〜!

犬にとって「野菜」はこんなにも使える食材

ところで、野菜というのは薬にもなるし、毒にもなり得ます。

様々な色素は、あなたの犬の老化を少しでも遅らせるための抗酸化物質だし、不溶性繊維は腸内細菌たちのためのとても良いエサとなり、デトックスにも貢献します。

ビタミンやミネラルを供給するのはもちろんのこと。

でも、料理法を間違えば、消化に負担がかかり、結石のリスクを作り出したり、栄養を逆に逃してしまうことにもなり兼ねません。

野菜の癖をよく知って、手作りごはんに是非活用して欲しいと思います。
野菜だって自分たちの種の繁殖を願って生きているわけですから、食べられたいと思って育つわけではないですよね?

野菜にも赤ちゃん期から老衰期までの一生のサイクルがあり、それぞれに栄養価も違います。
種は、とにかく誰か動けるモノに遠くに運んで行ってもらいたいと願っています。
植物は自分で動けないからね。
そこで、鳥や動物に食べてもらって、遠くに移動してもらいたい。

でも、消化されてしまっては困るので、硬い殻で覆い、酵素を阻害する物質で命を格納しています。だから、種をそのまま食べても中の栄養はとれません。

種が発芽するときは、その酵素阻害因子がなくなり、中に詰まっていた栄養があふれ出しますね。
その時に、私たちが食べさせてもらえば赤ちゃんの成長のためのものすごいエネルギーをいただくことができます。

ブロッコリースプラウトや、発芽玄米などが栄養価が高いと言われる所以です。
間引きの野菜を手に入れることができたら、ラッキーですね!
これは幼少期の元気な植物。
残念ながら大きなスーパーなどには到達しない野菜たちです。
近所に、農家や道の駅などがあれば、運良く手に入れることができるでしょう。

「大人」になってしまった野菜って…。

食料品店に並んでいる野菜たちは、大人になってしまった植物です。

もちろん、栄養はたくさん残っていますが、幼少期ほどではありません。

そして、皮にはやはり、野菜が紫外線や捕食者(動物や鳥など)から自分の身を守るための化学物質や、硬くて消化できないような繊維が含まれています。

茹でこぼさないと、口の中がイガイガするようなシュウ酸を含んでいたりね!

ひとつまみの塩を入れたお湯で茹でて、ゆで汁は捨て、水に晒す、という工程を経れば、結石のリスクとなるシュウ酸はとれるでしょう。

犬も人間も、植物の細胞壁を破壊するための酵素・セルラーゼを持っていません。

でも、人間はよく噛んだり適切な調理をすることによって、なんでもかんでも食べることができるようにしてきたのです。

フグの猛毒だって、3年間も発酵させて珍味として食べちゃうのですから!

 

私たちは、古くから伝わる知恵によって、犬たちにも野菜の恩恵を受けさせてあげる事ができるのだから嬉しいですよね。

ぜひ、1週間に一度からでも良いですから、作りたてのゴハンを食べさせてあげてくださいね。

私たちだって、毎日毎日、カップラーメンや缶詰ばかり食べるよりは、家族や友人のだれかが自分のために作ってくれたおうちのゴハンを美味しいと感じ、健康にも良いと知っているはずですから!

関連コンテンツ